人の思い込みは最高のエロスを演出する

「これ、飲んでみなよ」
 当時付き合っている男がおもむろにシート内にある白い錠剤をぱちっと取り出し、私の手に乗せた。

「なに?なんの薬なの?」

 怪しいことこの上ないも、私と男はすでにその頃、馴れ合いになっていて、セックスもマンネリだった。挙句、私は体質的にあまり濡れない。ときに、男は「人形を抱いているみたいだ」と、故意でゆった。
 
 女性も性に奔放で、ときに上に乗って腰を振れ。そういうとてもSな男だった。男によって開花されたこともあるが、まだ若かった私は恥じらいもありつつもまださほどセックス自体に対し快楽などを味わったことはなかった。

「これは、セックスが気持ち良くなる薬だよ。大丈夫。危険なことはない」

 男はおうようなく口調で私の口の中に薬を入れ、唇を重ね、水を私の口の中に流した。え?思いがけずについ飲み込んでしまった。

「うそ?大丈夫なの?本当に?」

 心臓が早鐘を打つ。急にドキドキしてきた。意味のわからい薬のせいだろうか。下半身に違和感があった。身体が熱を帯び、今までにない、尿意を催した。けれど、男はそんなあたしの身体の変化などはおかまいなしにあたしを組み敷いた。

 「わ、すごい濡れている」

 滅多に濡れないのに、私は愛液をかなりの量、流していた。男はクンニをしてくれない人だったので毎回挿入時はローションあるいは、唾を垂らしていた。それが、どうしてだか、昂揚をしてしまい、下半身がおかしいくらいに敏感になっていた。

 身体中が性感帯になってしまったようでどこを触られても、感じてしまい、おそろしいほど淫らな声をあげ、獣のように背後から何度も、何度も突かれた。騎乗位になって、陰核にローターをあてた。

 「ああ、ダメ、ああ、」
 
 陰核と挿入の刺激が重なり私の下半身が震えた。そうしてびちゃ、という音がし、潮を吹いたようだった。それでも抽送が続き、私はその最中ずっと、尿道がだらしなくなっていた。けれど、初めての快感に驚く。温かい液体が私の身体から流れるとともに、私はまたひとつ快楽を知った。行為が済んだあと、男にそれとなく魔法の薬のことを訪ねた。

「すごく、薬効いたみたいだよ。なんていう薬なの?」
 
 男は、ニヤリと口角をあげ、目を細めながら口を開いた。

「……、それさ、利尿剤だよ」
「え?利尿剤って?あの?ええ?」

 そうと聞いたら、またトイレに行きたくなった。それから何度もトイレに駆け込む。

 私はセックスが気持ち良くなる薬だと思っていた。思っていただけで本当は利尿剤だったのだ。思い込み。そう、私は思い込で快楽を得たのだ。利尿剤など全く快楽に通ずる薬ではない。けれど、飲んだせつなそう思ってしまって、私はどうやら騙されたのだ。

 この現象を生かし、あまり勃起力のない男性に「これ飲んでみて」と、精力剤だよ。と、渡した錠剤は本当は栄養剤で、けれど、男性はいつにない勃起を披露したことがある。

 人の思い込みはときに快楽をもたらす。ラムネでもいい。
 
【魔法の薬だよ】
 



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