「パートナー以外と性的触れ合いを楽しむのは、円満な関係を築くためのライフハック」稲田豊史

男性が自らの離婚エピソードを語る連載が書籍化された『ぼくたちの離婚』(角川新書)。男女間の齟齬があって起こる離婚ですが、夫に非がある離婚もあれば妻の不倫きっかけで起きた離婚、メンヘラ妻に苦しまされた挙句の離婚もあったりと様々です。そこには男の懺悔もあれば憎悪や悲しみ、諦め、様々な感情が綴られ、共感や哀れみだけでなく軽蔑や怒りすら感じるエピソードもあり、読む者の気持ちを揺さぶります。

この本のインタビュアーであり執筆も手がけたのが稲田豊史さん。自身も離婚経験のある稲田さんにこそ聞きたい“離婚との向き合い方”や、Kaikan読者にも無縁ではない“夫婦やパートナーとのセックスレス対策”についても伺いました。

 

――この本に出てくる男性には再婚している方もいて“結婚に絶望した男たちのエピソードじゃない”というところに、救われた思いでした。

稲田豊史(以下、稲田)「本書に収録した男性13人中8人が再婚しています。離婚した男性の気分はだいたい2パターンに分かれていて、ひとつは“共同生活や家庭の運営自体に自分が不向きと気づき、もう結婚にはコリゴリ”という人。もうひとつは“相手を間違えただけ。マッチングミスの問題なので、できるならことなら再婚したい、再婚も考えられる”という人。僕は後者でした」

 

――結婚、離婚は回数を重ねるごとにより良くなるものだと!

稲田「そうありたいですよね。人間は年齢を重ね経験を積むと共に成長し、内面が変わる。30歳、40歳といった大人になっても変わります。夫婦のお互いが内面ごと変わるなら、相性が徐々に変化していくのは当然。離婚は転職と同じようなもので、自分が成長・変化して会社と合わなくなったら、『今までありがとう』と言い合って円満に転職すればいい。そんなカジュアルさを社会に求めたいし、社会の意識変化が起こると良いと思っています。もちろん子供がいる場合は簡単ではないですが、親の不仲を子供に延々と見せ続けるくらいなら、親同士は別れるけど親子関係は変わらないよと子供にきちんと説明して、落とし所を見つけるのが良いのではないでしょうか」

 

――離婚に至るまでにはセックスレスが付き物ですが、なぜ起こるんでしょう?

稲田「夫は欲しているのに妻が欲さなくなったとか、妻が欲して夫が欲さないとか、二人とも一切性欲がなくなったとか、いろんなタイプがありますよね。このうち夫が妻に対して性欲がなくなるパターンで多いのが――これは女性からの大ブーイングを覚悟して言いますけど――“キリキリ、イライラした妻の姿を日常的に見せられて気分が萎える”です」

 

――まあその、キリキリやイライラの原因のひとつが夫だったりもするわけで。

稲田「はい、もちろん。だから、ものすごく勝手な男側の意見です。そして勝手ついでに言うなら、『容姿は愛嬌でカバーできるが、イライラをぶつけてくる女性には、その人がいくら整った容姿でも興奮できない』。特に30代後半以上の男性にこう主張する人は少なくありません。出産した妻を女として見られなくなったという話をよく聞きますが、容姿の変化よりも、家事や育児に追われてピリピリしたムードを発する妻から無言の圧力を感じたり、セックスどころじゃない余裕のなさを日常的に見て感じ取るからなんですよね」

 

――レスには家事育児のバランス感もかなり影響しているわけですね。

稲田「大いにありますよ。生活の中の夫婦間における『ゆとり』が保てれば、レスを避けられます。そのために家事分担をしたり、時短家事を工夫したり、家事代行に頼む手もある。夫婦が抱える問題をどんどん絞り込んでいって、妻がイライラ・キリキリしないためのソリューションを積極的に見つけ、金をかけてでも実行していくべき。イライラがなくならない限り、寝室の雰囲気作りやセクシーな下着を身につけることにいくら努力したって、レスの解消にはつながりません」

 

――では女性向け風俗を利用したりと外で性欲を満たす方法についてはどう思いますか?

稲田「全然アリじゃないですか。いろんな方が言っていますが、元来“恋愛”“夫婦生活”“セックス”を同じ相手でまかなうことには限界がありますから。家庭の中に極力イライラやストレスを持ち込まないため、外でリフレッシュしてバランスをとるのが得策です。ただ、男性の多くは妻が風俗に行っているという事実に耐えられないので、黙って行く。これに尽きます」

 

――女性向け風俗は気になるし利用したいけど抵抗感を持つ女性もいます。これについてはどう思われますか?

稲田「危険が伴わないか、リスクはないかといった観点からの抵抗感ならわかりますが、それ以外の理由からの抵抗感ってなんでしょうか。倫理観ですか? でも、男性向けの風俗は大昔から表立ってあったのに、女性向けは非常に数が少なかった。少なくとも表向きにはないものとされてきた。女性にだって男性と同じように性欲があるのに。これまで男性向けにあった“解放区”が女性用にもできたというだけの話で、それを利用することに抵抗感を持つ必要なんてないと思います。男も使ってるんだから、お互い様ですよ」

 

――女性が風俗に行くことに対し、はしたないとか淫らとか思われるのではないか、と感じてしまう女性もいるようです。

稲田「満たされていない性欲や誰にも言えない願望は、たった一人の相手、つまり夫だけで満たせるわけがない。たった一人が受け止められるものでもないです。たとえばジャニーズ好きの女性が、夫にその話をしても興味を持って聞いてくれないから、同好の士と夫抜きでコンサートに行き、語らいの場に参加して充足感を得る。これと一緒ですよ。相手が受け止められないものを無理に受け取ってもらおうとするのではなく、潔く別のチャンネル、別の受け皿を見つけて解消していくのが良いと思います」

 

――パートナーがいるのに外で満たそうとすることへの後ろめたさもあったりして。

稲田「取材した男性のなかに“縁側とテーブル理論”というものを話してくれた人がいます。その男性の別れた妻は『2人が歳を重ねても、縁側に並んで外を見ながらお茶をすするなんて嫌だ。ずっとテーブルで見つめ合っていたい』と言っていたそうなんですが、この男性は逆に『テーブルではなく縁側に座りたかった』と言っていました。相手と見つめ合うのではなく、たまにちょっと向き合うくらいが良かったのかもしれないと。恋愛と夫婦生活とセックスを1対1で真正面から全部向き合うのはやはり危険で、相手と向き合いすぎないからこそうまくいくスタイルもあるのではないでしょうか」

 

――パートナーで満たされないのなら、外で求めてしまうのは全然アリだと。

稲田「何か満たされないものがあって、それを補ってくれるのが女性向け風俗に行くことなのだとしたら、それは自分を幸せに導く決断ですよね。相手では満たしてくれないものを他の何かで補うのは、個人が幸せを求めるための立派な努力。ライフハックのようなものだと思います。外で愛されて、満たされて、自己肯定感も上がっていく。後ろめたさを感じる必要なんて全くないですよ」

 

離婚話から始まり、個々の幸福探求に至るまでいろんなお話を伺えました。パートナーがいる人もいない人も、何か性的に満たされない気持ちや感覚に対して、女性向け風俗を利用することは、自分を幸せにするための決断のひとつ、良いお言葉です!

 

    • 稲田豊史



編集者/ライター。1974年生まれ。業界誌編集長や書籍編集者を経て2013年にフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)なども。【WEB】http://inadatoyoshi.com

 

【イベント情報】

「ぼくたちは『いい夫婦の日』をどんなメンタルで迎えればよいのか」

登壇者:稲田豊史(著者)+宮崎智之(フリーライター)

開催日/2019年11月21日(木)20:00~22:00 (19:30開場)

開催場所/本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)

詳細/http://bookandbeer.com/event/20191121/



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