「あのさ、明日からあたし熱海に出張なの」
目の前にいる夫は好きなものを後に食べるタイプで大好物のエビフライがまた手付かずでいる。タルタルソースは手作り。あたしは料理も好きだし、夫も申し分ないくらい好きだし、猫のアンコも好きだし、小柄でぽっちゃりでちょっとだけ大根足の自分も好きだし、会社の野々山部長も好きだし世の中は好きなもので溢れている。
へー。そうなんだ。夫はあまり感心のない声を出し、あたしを一瞥したあと、再び箸を動かしいよいよメインのエビフライをつまんだ。
「お土産よろしく」といってからエビフライをほおばる。うめー! さすが、尚美のタルタルソースは最高だな! と、本当にうれしそうに褒め称えた。
「うん。温泉まんじゅうかってくる」
「またぁ? 地酒もね」
うん、あたしはうなずいてエビフライをほおばる夫を見やる。口の端にタルタルソースがついている。教えてあげようか、それとも、ねぇ、ついてる。などといってから背後から寄り添って唇を舐めようか。ふと、どちらかを思い浮かべる。
夫はあたしよりも5歳下だ。あたしは今年42歳。夫は顔立ちも整っているし、優しいし、真面目だし、嫌なところがひとつもない。ないのに、どうして一緒に暮らすとセックスとゆう最大級のコミュニケーションがなくなってしまうのだろう。準備もなしで急に唇を舐めたら怒るだろうか。それとも嬉しがるのだろうか。まるで検討がつかない。
夫と最後に寝たのはいつなのかが思い出せない。夫は他に女が、いや、セフレが、いやいや、彼女が、やだぁ、いるのだろうか。頭の中が渦を巻いている。
夫はあたしがセックスなしで平気だと思っている。な、わけないじゃないか。したくて、したくて、昨日など、宅配の兄ちゃんを襲って犯したし、それから会社の上司でもある野々山部長とは立ちバックでセックスをしたし、コンビニの定員の古淵くんとはカーセックスをした。古淵くんは若いので2発発射した。あたしの膣は完全にぽっかりと穴が開き、男どもが皆中だしをするものだから膣からはイカの匂いが充満をした。
「ごちそうさま」
ハッと我にかえる。あまりにも欲求不満が過ぎてあう男あう男と妄想でセックスをしまくっている。理性があってよかったなぁ。と、胸を撫で下ろす。
『あのう、セックスしませんか』
などとあう男あう男に声をかけていたら警察に捕まるか、こいつ頭大丈夫か? などといわれて精神科いきだ。
「はーい。一泊だから明日の夜は適当に食べてきてね」
「うん、わかった。風呂入って寝るね。お先」
「うん、おやすみー」
夫の背中に声をかけあたしは洗い物をしだす。明日は一ヶ月ぶりのデートだ。ずっと楽しみにしていた。熱海なんてどうかなぁ。温泉街の提案をしたのはあたしだ。今夜楽しみ過ぎて眠れないかも。まるで小学校の遠足の前の日みたいにあたしの思考は完全に小学生になっていた。夫にはまるで後ろめたさなどはない。あたしが稼いだお金で遊ぶのだから。お金とゆうのは心は決して買えないが、肉体は買うことが出来る。世の中金じゃー。それはまんざら嘘ではない。
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あたしはいつも現地集合、現地解散にしている。今から来るのは、
【マダムお助け隊】
とゆうサイトから選んだ気に入りのたけしさんだ。いわゆる彼氏代行業みたいなシステムで一泊になるとそれに価する時間給と交通費に食事代ホテル代などがかさむ。前金制になっていてすでに料金は振り込んである。
目に見えない相手だから約束をすっぽかすおそれがある。なので前金制はいいことだと女のあたしでも思う。実際、前金制にしたら急に緊張していくのが躊躇われてもいかないと損だ。とゆうことにおいても理にかなっている。
あたしは熱海駅のホームに座ってたけしさんを待つ。待つのは嫌ではない。待つこともプレイの一環だと思う。だってこんなにドキドキするなんて滅多にないことだから。
「あー、尚美さん、もういらしたのですか」
新幹線が目の前で停車し、その2分後にたけしさんが声をかけてきた。あたしは、昨日からいるの、あまりにも楽しみだったから。と、口を尖らせていうと
「ええ! 本当ですか? だったら僕も前乗りで昨日きましたよ」
内緒でね。と、笑って付け足す。え? 本当に内緒で来るの? いやいや、来ないだろうよ。口がうまいなぁ、てゆうか信じているのだろうか。
「いやぁ、嘘だけど。さっき来ました」
ですよねぇー。まことさんは、尚美さん面白すぎるぅ、と、目を細めて笑った。白い歯が嘘くさい笑顔を引き立たせるも、50歳とゆう年齢にしては茶目っ気たっぷりな紳士さが好きだ。
「行きましょうか」
まことさんは右手を差し出す。あたしもその手に自分の左手を乗せた。恋人つなぎをする。心地の良い風があたしたちの間をすり抜けてゆく。無骨な手が大人の男だ。
ホテルは熱海では有名なホテルにした。待ち合わせが3時とゆう半端な時間だったけれど、チエックインは出来るので先に温泉で汗を流すことにした。
「一緒にお風呂にいきましょう」
「ええ。出たらそこの休憩所で待ってますね」
ホテルの浴衣を着て一緒にお風呂にいくだけで陰部が濡れそうだ。エスコートの上手なたけしさん。そういえば彼は独身なのだろうか。会うのはこれで3度目だけれど、彼のことを何も知らない。
お湯はとにかく柔らかくて身体は火照って陰部も火照った。酒を飲む前に濃厚な愛撫をしてもらわないとならない。愛撫だけでもいい。早く触って欲しい。見た目は人間なあたしだけれど、中身は歩く性器だ。
休憩所にたけしさんがいてスポーツ新聞を読んでいた。あちゃー。これはいかんやつだ。なんて素敵なの。浴衣でスポーツ新聞が似合うのって、たけしさんと、マスオさんくらいじゃない? は? たけしさんはあたしに気がついて手を挙げた。わ、まぶしい。冷静に、あたしは性器から人間に戻って牛乳を買った。
部屋はまだ布団は敷いてないけれど
「お願いよ。強く抱きしめてぇ!」
あたしは着ている浴衣を脱ぎすて座布団の上に寝そべった。性急だなぁ、と、たけしさんの冷笑。それでももう我慢ができなかった。陰部から愛液が滲み出ているのがわかる。あれ? もう濡れてるよ。細い食指があたしの割れ目をなぞる。
「ああん、もっと、弄って。お願いよ。ずっとオナニーを我慢していたのよ」
どうでもいいことまで口に出てしまい、けれどもはや恥じらいなどはない。ヌルヌルと愛液が湧き出てくる。たけしさんはおもむろにローターを取り出して豆を剥いてあてがう。無機質な機会音が部屋に響きあたしの嬌声も負けじと響く。挿入がないことを除けば、キスはするし、舐められるし、もっと舐めてといえば舐めてくれるし、てゆうかもっと舐めてと何度も懇願しても舐めてくれる。陰部がふやけるまで舐め、溶けてしまうのではとか考える。陰部は塩を振ったらなめくじのよう溶けてなくなりそうないきおいだ。
なくなってもいいし、このままずっとなにもかも忘れて快楽の湯に快楽のぬるま湯に浸かっていたい。
【湯の花】が急に脳内に浮かびあがる。どこの温泉だったか。夫と一緒にいった温泉で初めて湯の花を見た。黒くてまるでゴミのようで汚いものに見えたけれど神秘的でそれでいていい成分が抽出されていると触りたくなった。
手にどきそうで手に届かない存在。けれど欲してしまうその指先。
たけしさんはまるで湯の花だ。
夕食時に酒を飲みすぎてしまい、べろんべろんのあたしをたけしさんは渾身的に介抱してくれたようだ。朝方、頭が痛い中起きたら、たけしさんの顔に疲労の影が見えていた。
「とーってもたのしかったわ。このままたけしさんと駆け落ちしちゃおっかなぁ」
へへへ。あたしは笑って肩をすくめてみせた。
「いいですよ」
え? いいの?
あたしたちは大笑いしながら駅までの道を歩く。来た時と同じように恋人つなぎをして。あなたがなにものでも構わない。なにものでもないから楽しいし、夫にだってもっともっと優しく出来る。
【女性用風俗小説4】〜このまま・ずっと〜
