kaikan小説 23| ワインひとくちのうそ

「やっぱり牛肉には赤よね」

照明がロウソクだけの隠れ家的お肉専門店にいる。シャトーブリアンをはじめとする高級牛肉がレアでちょこちょこと出てくる。

「口の中で肉汁が溢れてそれでいて噛まないでもとろける感じです。それでいて全くしつこくない……」

フォークとナイフの使い方があまり上手とはいいがたい。けれど、美味しい、美味しいと、何度も言葉にして、蔓延な笑みを向ける彼はとても愛らしい。

「ふふ。なんて上手な食レポなのかな? みさきくんは」

「えええ! そうっすか? あーざす。てゆうか俺、こんなに美味しい肉を食べたの始めってで、」

本当に、美味しいです。と、最後にあらたまった声でしめくくる。

「赤ワイン好きっすね。リナさん。白は? 苦手なの?」

苦手じゃないわ。あたしはクスクスと笑いながらワイングラスを持ち上げて赤ワインを一口飲んだ。白も好きだけれど、やっぱり赤。燃えるような赤。赤ワインは比喩じゃなくてあたしの血となり肉となり欲望の炎を燃やす。

「さーて、今夜はまだ飲むよ。いい?」

みさきくんは、目を大きくあけて、望むところです、と、こたえてから笑う。みさきくんも結構飲める口だ。だから一緒にワインが飲める出張性感癒しホストを呼んでいる。どうせ好きなワインを飲むならば顔が良くて、機転のきく、それでいて誰がみても羨ような男の子と飲みたい。なんて素敵な世の中になったのだろう。

お金で彼の時間を買っている。だから余計その時間をどう過ごそうか考えるのも楽しい。と、いっても結果的には『酒を飲んでべろべろで終わる』のだけれど。

ホテルに入るや否や浴槽に湯をはって、赤ワインを流し入れる。飲むために買うワインは高価なものにしているけれど、浴槽に入れるのは安物のワインだ。

一緒にワイン風呂に入る。これで3回目だ。ワインの匂いに包まれ至福の時間が始まった。

「いい匂い」

背後からみさきくんの声がしてあたしの胸を揉んでいる。乳首をコリっとつまみあげて、少しだけ意地の悪い顔がのぞきでる。

「あっ、」声がもれる。「トントンに尖ってる」みさきくんがささやく。結構飲んでいるし、ワインの湯気によって頭の中がぼんやりとしている。この空間がなにせ好きだ。ワインの湯気は酔いとエロスをかもしだすから。

その後、お風呂のヘリに座らされて陰部を舌先で舐められた。陰核がわななく。ビクン、ビクンと身体をふるわせ、何度目かの舌の悪戯でイッテしまった。指は優しく蜜壺の中に収まっている。声にならない淫靡な声は狭くてワインの湯気のお風呂の中に吸い込まれてゆく。

若いくせに。

あたしは、心の中でつぶやく。どうして男って裸になると女を変にさせるのだろう。毅然とした女でも裸になれは、ただの女。

「いやぁ〜、今日はリナさん、感じ方が半端じゃなかったです」

お風呂から上がって、冷えたワインを飲んでいる。みさきくんは白ワインを飲んでいる。

「俺、本当は、白の方が好きなんっすよ」

ホテルに入る前にこっそりと教えてくれた。けど、と、タバコに火をつけてから、こう付け足した。

「リナさんはきっと食わず嫌いじゃなくて飲まず嫌いかも。白、結構うまいです」

今、一緒に白ワインを飲んでいる。喉越しがとてもいいしなんてあっさりしているのだろう。

「おいしいわ」



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