kaikan小説 27|アオイシーツ

隣にいる人はガーガーといびきをかき、ときおりおならをしながら、あー、だとか、うー、だとか寝言をいいながら快適に眠っている。あたしはシーツにくるまりながら天井をじっと睨みつける。保安灯の中でも天井の模様がわかるのは見慣れてしまいおぼているのだ。

いちいちの寝言があたしの眠気をさらっていく。明日も寝不足確定だ。

嘘でもいい、義理でもいいから、抱いてくれたらいいのに。

彼とはもう三ヶ月ほどいとなみがない。こんなにも大好きなのに。こんなにもそばにいるのに。こんなにも……。ああー、もう! 隣にいる人を起こさないようそうっと布団から出る。

そうしてスマホの画面に目を落とし、『女性専用風俗』サイトを覗く。お金を払ってまで男性を。そのような思考などあたしの中ではまるで皆無だった。けれど、たくさん羅列されている女性が書く感想レビューを読むたびに自分に投影をしてみた。

「女性専用風俗は浮気になるのかなぁ」

心の中で自問自答をする。男性だって風俗にいく。そうして風俗は浮気じゃないなんて平然といってのける。彼は風俗にいったことがあるのだろうか。同棲をして3年。そのような素振りなどみられないけれど、出張がたびたびあるので本当のところはわからない。

一度だけ。

あたしはあまりのさみしさと孤独さから禁断の扉をノックした。

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禁断の扉はあまりにも誇張すぎだと、実際にマスダさんにあって苦笑いを浮かべた。

「わりと普通なんですね」

あってすぐに思った感想を述べた。「わりと普通ですよ。一体どんな想像をしてたのかな」マスダさんはくつくつと笑う。あたしもいちいち笑った。

「どうにでもしてください。今夜だけは」

なんでもわがままを訊いてあげますよ。マスダさんのブログにそう書いてあったし、女性側のレビューも好印象なことばかり書いてあった。マスダさんは目を細めながら、いいですよ、と、だけ短くいい、あたしたちは待ち合わせ場所から一番近いラブホテルに入った。

「わー、何年かぶりにホテルに入ったなぁー」

つい感嘆の声がでた。「あはは、そんなにはしゃぐの? かわいいね。あおいちゃん」

「だって、」

その瞬間唇を塞がれ、ベッドに押し倒された。はっ、として身体を強張らせると、すぐ真上にマスダさんの目があった。目の中にあたしの目が映っている。黒目が茶色いなと思った。カラコンかなとも。

「強引だったかな? あおいちゃんあまりにもかわいいから」

ごく自然に出る声は常套句だろう。それでもおんなあつかいされている方のが嬉しくて心臓が早鐘を打つ。事前にシャワーを浴びてきてよかった、と、胸をなでおろしあたしはそのまま目をつむった。

マスダさんの愛撫は『女慣れ』を通り越しているほどあたしの快感を得るツボをしっかりとおさえていたし、それに従ってあたしの身体からはたくさんの愛液とたくさんの嬌声がこぼれた。

散々いきまくってしまい身体が弛緩している中、天井をじっと見つめる。うちではない知らない場所の天井。

マスダさんはあたしの頭をなぜてくれている。

うちに帰って青色のシーツにくるまりたかった。彼は今夜遅いだろうか。ふと、彼に対する愛情の深さと脆さを同時に知った気がした。

「時間だね」



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