【女性用風俗小説45】~ジェラシー~

うそっ? えっ!

パソコンの中で見たこともない上品なスーツを身にまとい、富士額だからおでこを出す髪型はどうもね。と、いっているはずなのに思い切りおでこ全開にしオールバックにした髪の毛はワックスで綺麗に固められている。カツラなの? と突っ込みたくなるような完璧な髪型。顔の写真と全身の写真が2枚づつ。ちょっとだけ濡れたような目と唇は意図的なのだろう。

それにしても。あたしは画面にうつる『性感ホスト・夕(ユウ)』を食い入るように見つめる。こんなに本人の顔を見つめるのはいつ振りだろうと心の中で指を折る。

ユウはしかしうっとりするほどな笑みを向けあたしに笑いかける。ユウなんだ、あなたそうして笑えるんだね。と、感心半分まだ驚き半分だ。

「いってきます」

今朝いつものように優は仕事に出かけた。無精髭をこしらえて水筒とあたしの作ったおにぎりを2つ持って。優の仕事は『とび』で「とんびじゃねーよ。鳶」と出会ったころ何も知らないあたしに教えてくれた。同棲して半年。付き合って1年。あたしは今まで優のこと(全体的に)をうたぐったことなど一度もないしあるいは仕事場になど出向いたこともない。

きちんと7時に帰ってくるのだ。おもての空気と汗くささと汚れた作業着を着て。おにぎりもっと大きくして。足りねーよ。といって。

どうやら優は『性感ホスト』の『夕』らしい。そういえば。と出会った頃を思い出してみる。あたしは優のなにに一番引かれたといえばしかし『顔』だった。『性格』とか『趣味はあう』とか。そんなのってその場でのとりつくろう常套句であって最初は絶対に『顔』なのだ。そういうあたしもこういっては女友達に叱咤されそうだけれど顔とスタイルだけはいい。顔がいい人生と悪い人生ならいい方に決まっている。ブスは死ね。ブスは実際性格が良くない。女友達の中にもそれに属している子がいるけれど、ブスなので引きたて役になるのかいやに友達が多いのにおどろく。そのブスの主催の飲み会で出会ったのが『優』だった。

優は果たして『夕』となりブスでもデブでも相手にしているのだろうか。ふっ、つい鼻白んでしまう。てゆうかそんなことはどうでもいい。『優』はもう『夕』に決定されたのだ。

脇が甘いぞ。優。写メ日記を遡ってみるとどうみてもこのアパートの全身うつる鏡の中でTシャツ姿の写メを鏡越しに撮り『さてー。今日はおやすみ〜はーと。料理でもしようかなぁ〜って。こうみえて僕は料理男子で〜す!明日は出勤するのでご予約お願いしまっす!』嘘つけ。あたしはつい声を出す。料理の、り、の字も書けないじゃないのかってほどなにも出来ない優。栄養士のあたしだからこそ彼の身体を維持しているのだよ。優くん。といってやりたい。

多少の嫉妬と多少の怒りと多少の諦観。けれど、優を責めるつもりなどさらさらない。だっていつもあたしの所に必ず帰ってきてくれるのだし。おもての世界に出てお金を稼ぐことは『鳶』でも『ホスト』でもなんら相違ない。きっと出会ったころからホストだったのだろう。

「ねぇ、松坂桃李くんの映画、えっと、娼年だっけ? 観に行こーよ」まさか優がその世界にいるなんて思っていなかったので微笑んで誘ったら、いや俺はいいや、とあっさり却下された。

あーあー。今思うと納得をしてしまう。そうしてクスクスと笑いがこみ上げる。

身体と時間は売っている。けれど心までは売れない。どこかのホストがTwitteでつぶやいていた。

まあ、そうね。



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