kaikan小説 47|りゅうじ

━━━ う、うまくなってる……。

3ヶ月と20日ぶりに出張ホストである『りゅうじ』を指名した。その日りゅうじくんはなんとこの世界に入って初めてのデビューだった。その1番客だったのがあたしだ。そうゆうあたしも『女性向け風俗店』は3回目だったうえ男性にも慣れていないのだからりゅうじくんとの時間はなんともぎこちなさだけしか印象がない。

「あ、すみません」とか「あ、もっとこうしてほしいことありますか」とか「背中が綺麗ですね」なんていうどうでもいい世辞を並べて気をつかいその会は気もそぞろに終わった。

「ねえ、ちょっとだけいってもいいかな」

あまり語尾を尖らせない程度にしりゅうじくんと向き合った。はい? 彼のポカンとした顔はいまだに思い出しても笑えてくる。子どもじみた顔。まだ23歳という顔。

「これからね、もっといろんな経験を重ねていくと思うの」あたしはそこで言葉を切る。りゅうじくんの目は真剣な眼差しになっているのを確認し続ける。

「でもね、これだけは憶えていてほしいんだ。女はね、線香花火みたいなものなの。燃えている最中はあちらこちらに火の光線をなげかけ男に電波を送るわ。けどねその電波の終焉とともにまあるい熱の塊になるの」

うん、うん。彼は顎を引き真剣に聞いている。で? 先を促されたので

「熱の塊のときが、地面に落ちてしまう前がいちばん熱い余韻があるの。だから最後まで抱きしめてあげて。いくら突飛なサービスでもね、最後が大事なの。最後の抱擁が。熱くなった塊をりゅうじくんの身体でそうっと冷やしてあけて━━━」

女はなにせ包まれたいのだ。余韻を大事にしたい。線香花火は女性に似ている。そのことがいいたかった。

「うーん」

彼は唸ってなにかを考えていた。至って図面通りの言葉に態度だった彼はまだ原石でこの先の接客次第で上にも下にでもなれる。

「ごめんなさい。あたし。知ったかぶりね。嫌味なねーさんだと思ったでしょ?」あたしはそういって顔をしかめた。いいえ、りゅうじくんは首をよこにふってから、最初がハナさんでよかったですよといいながらクスクスと笑った。あどけない笑いだったけれどどこかでなにかを決心した笑いに見て取れた。

 

「ハナさん僕の胸の中におさまってください」

3ヶ月と20日前のりゅうじくんとはまるで別人のよう女性に対するあれやこれが上達していた。変わってなかったのは可愛い笑顔とポカン顔だけ。

「たくましくなったわ」なのでそういった。うまくなった。はどうしてだかいえなかった。

そうかな。彼は鼻の下を指でこすってうふふと笑う。あたしもほんとうにたくましくなった胸の中におさまってうふふと笑った。

「あれから、」りゅうじくんが独り言のようにつぶやいたのでとくになにもリアクションもなく耳をそばだてた。

「あれからたくさんの女性と出会いました。本気になられたこともあります。線引きはむずかしい。僕は仕事でこなしているから。けど惚れていただくもの仕事だし。あ、でもうまく交わしてます。そこらへんは熟知しています。割り切るのもうまくなったし」

あ、僕喋りすぎだ。だってハナさん師匠みたいなものなんだもん。とまた笑う。いやいや師匠呼ばわれされたくなぁといいあたしも笑う。

「けどこうやって笑いあえることって素晴らしいじゃない。素敵だわ。熱の塊をうまく中和してる」

きっと接客していくうちに身についたのだろう。彼はうまく立ち回っている。もうすっかりプロの顔だ。

「僕、この仕事好きです。女性は奥深い」

「そうね」



オススメ記事